茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~ -2ページ目

映画「愛を読むひと」

原題:The Reader
ハンナ役を引き受けていたニコール・キッドマンが妊娠発覚により降板したといういわくつきのこの映画、焦点は年上の女性への憧れか親子の断絶か・・・!?

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当時15歳のマイケル(デヴィッド・クロス)とハンナ(ケイト・ウィンスレット)が初めて出会うのは1958年のこと、猩紅熱を患った彼を優しくいたわり家まで送ってくれた市電車掌の彼女への思慕は募り再び訪ねる、そして21歳の歳の差も厭わず男女の仲に・・・されど甘美な愛欲に溺れる日々は短く、ひと夏の幸せな思い出として封印されるが、8年後のこと、彼は彼女が背負う真実を知ることとなる。彼女は事務的に仕事をこなしただけとはいえ、ナチによる殺戮に加担した罪は重く懲役を課せられるが、彼が気付いた秘密は彼女が文盲だったということ・・・あの夏の日々、愛の営みよりも朗読を優先させる彼女の思いが痛く思い出される。
ベッドの上で彼の朗読する悲しい物語に涙する彼女、ずる賢さなど無縁で純粋な彼女、法廷での彼女は自虐的かのようでもあり苛立たしささえ覚えるけど、教育を受けられなかった彼女にも、子供のような心のままの彼女にも、拭えない罪の意識が自らを追い込んでいくのだろう、彼(レイフ・ファインズ)が愛を込めて吹き込んだ物語の朗読テープで識字を克服した彼女だけど、面会に行った彼の目に映る彼女は白髪の老女、信じられない光景を目を前にして彼女が差し出した手に思わず彼は手を引っ込めてしまう、哀しい悲劇の結末です。
最後にほっとさせるシーン、苦悩に満ち心の通わなかった娘ユリア(ハンナー・ヘルツシュプルング)に、彼自身の愛の顛末をすべて話して聞かせる、ここが父と娘の打ち解けた明るい未来を予感させる。

愛を読むひと

映画「あの日の指輪を待つきみへ」

原題:Closing the Ring
最近読んだ「100 Touching Story」ただ単純に百の感動的な短い物語を世界中から集めただけの本だけど、そのほとんどのお話に胸の詰まる思いがする・・・

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この映画もそんなタッチング・ストーリーのひとつに数えられそうな実話から触発されて創られたという、それは1941年のこと、ベルファストはアイルランドの丘に悪天候で激突炎上した米軍爆撃機B-17の搭乗員テディ(スティーヴン・アメル)とエセル・アン(ミーシャ・バートン)を巡る人間模様の物語、時代は下り半世紀後、エセル・アン(シャーリー・マクレーン)の元に届いた指輪発見の知らせ、その指輪は当時米軍機激突現場に居合わせてテディのダイイング・メッセージを託された元消防士のクィンラン(ピート・ポスルスウェイト)が探し続けていたものだった。偶然それを見つけたジミー(マーティン・マッキャン)は、時の成り行きで米国に住むエセル・アンを訪ね爆撃機の残骸と、エセル・アン・テディと刻まれたその指輪を届ける。そして半世紀の間封印されていた愛の物語が激しく堰を切ったように溢れ出す。
登場人物の配役はいかにも出来すぎで創られすぎじゃないかと思うけど、シャーリー・マクレーンのいかにも高慢な振る舞いが鼻につくけど、徐々に明かされる物語の真実は感動的なもので、エセル・アンの苦悩、クィンランの罪の意識、ジャック(クリストファー・プラマー)の愛への戸惑い、マリー(ネーヴ・キャンベル)の最後の思いやり、それらが見事に融合し、21歳で人生を終えたというエセル・アンの、半世紀の間笑顔も涙も見せることがなかったというエセル・アンの、その最後の丘の上に立つ彼女の涙と共に、感動の涙を誘われる。
(wowow)  あの日の指輪を待つきみへ

映画「シークレット・サンシャイン」

原題:Secret Sunshine
釜山(プサン)にも程近い密陽(ミリャン)、秘密の陽射し、それがその街の名前の意味だという、そのシークレット・サンシャインは彼女の心にも射すのか・・・

茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~-secret_sunshine 茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~-Secret Sunshine

イ・シネ(チョン・ドヨン)は幼い息子のジュン(ソン・ヨンジョプ)を連れて、その田舎町にやってきた。亡き夫の故郷だというその町の手前で車は故障し息子は愚図り、物語の始まりに不吉な予感を漂わせる。亡き夫は借金まみれで、おまけに浮気していたという噂もあるのに、なぜ彼女はあえてその町に住もうというのか、例え浮気されても、死ぬまでいや死んでもなお愛しているというのか、嘲笑と哀れみと変人と罵られながらの反発から虚栄心を滲ませながらも気を張り気丈に明るく振舞おうとする彼女に、なぜか心惹かれるキム・ジョンチャン(ソン・ガンホ)がいる、けれども彼女は彼には目もくれずピアノ教室を開いて息子だけを生きがいにつつましく生きようしている。そんな彼女に突然訪れる不幸、信頼できそうな登場人物に見えるパク・ドソプ(チョ・ヨンジン)、塾を営む彼が実は愚直な大馬鹿者で彼女の虚栄を見破れず架空の資産目当てに誘拐脅迫事件を起こしてしまう。彼女のとった行動は・・・銀行に駆け込み僅かな全財産を現金に変え犯人の言いなりに、無我夢中の行動の中でジョンチャンの家の前まで行くが、助けを求めることを躊躇った結果が奈落の底・・・愛する息子の亡骸を目前に成す術もなく悲嘆にくれ神を信じることで救いを求めるが、またしても彼女を襲う過酷な神の仕打ち・・・
意を決して赦しを与えに行ったはずの面会の場で、囚人である彼が放った言葉には愕然とする、悪びれることなく遺族を前にしながら既に神に赦しを貰い平安な日々を過ごしているという、あの場で発狂するほどに絶叫するのではないかと思ったけど、失意のあまりに失神してしまい、それからの彼女の行動が気が触れたにしても面白い、それにしてもこの映画の見所は、どんなに夕食の約束をすっぽかされようと、どんなに疎まれようと、彼女のことを思い続けるジョンチャンのひたむきな愛のほうかも知れない、最後に幸福のサンシャインを浴びるのは彼・・・
(wowow)  シークレット・サンシャイン

映画「セブンティーン・アゲイン」

原題:17 again
夫婦喧嘩の仲直りができました、というには随分と大袈裟な仕掛け、とも言えなくもなさそうだけど、久し振りにいい映画でジワジワ来たかもしれないです・・・

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思い出すのは「もしも昨日が選べたら」なんだけど、現実にはなんともならない時間というものをなんとかしちゃうのと家族愛の大切さを教えている点で同じかな・・・高校生のマイク・オドネル(ザック・エフロン)、プロの選手になれるかどうかの大事なバスケット・ボールの試合、その試合の最中にスカーレット(アリソン・ミラー)を追いかけて人生を棒に振るなんて、彼女は大事な試合だから後で話そうと言っていたのに、とても有り得ない信じられない無謀な行動でしょう・・・そして20年後、マイク・オドネル(マシュー・ペリー)とスカーレット(レスリー・マン)は、娘マギー(ミシェル・トラクテンバーグ)と息子アレックス(スターリング・ナイト)にも恵まれ幸せな家庭を築いていた、のならそれでめでたしめでたしなのだけど、そのマイクの境遇と言えば、会社での昇進は叶わず、妻に見放され子供達には無視され、20年前にすべてを投げうって手に入れたはずの愛すべき家庭が家族崩壊の危機を迎えていた、だけどそこに、手を差し伸べるのが「ブルース・オールマイティ」でも登場したような神様、というわけで蘇る人生の分岐点、17歳よもう一度・・・
物語的に、再びあのシーンがやってきた時、一体彼はどうするのだろうと、期待と不安が入り混じったような気分にさせられるけど、結局は人生をやり直す道を選ぶんじゃないかと・・・でも違ったんだよね、そこが感動的なんだよねぇ、子供達の非行を戒め、勇気を与え、妻の愛をしっかり取り戻した。ちょっと下品ながらもネッド(トーマス・レノン)には笑えるし、誰でも妄想しちゃうようなことが現実的に描かれていて、面白くて感動的な映画です。

セブンティーン・アゲイン

映画「天使と悪魔」

原題:Angels & Demons
最初から最後まで興味を持って観れるかどうかの根競べ、ついつい駄洒落を言ってしまうコンクラーベ、前作の「ダ・ヴィンチ・コード」と比べてどうだろうか・・・

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前作がとてもお気に召さなくて、今回も一抹の不安があったけど・・・そもそも天使と悪魔というタイトルから受けるイメージは西洋的ながら、期待としては人間的な善と悪の内面に切り込みながらのドラマチックな展開を望みつつ観にいったわけだけど、映画が始まったらいきなり睡魔に襲われてしまった。冒頭で登場する反物質なんとかも訳が分からなく、ガリレオ・ガリレイが中心人物だったという秘密結社イルミナティが蘇るという話も荒唐無稽のようで、カトリック教会やら信者10億人の頂点に立つヴァチカンなんとかにもなんとも興味がなくて、ロバート・ラングドン(トム・ハンクス)にもヴィットリア・ヴェトラ(アイェレット・ゾラー)にも感情移入できず、前半何度も何度も波状攻撃を仕掛けてくる悪魔のような睡魔とすっかりお友達状態に陥る、後半はそこそこスピーディな展開での火あぶりやら水攻めやら爆死やら派手なシーンの積み重ねがあったおかげかなんとか持ちこたえることができる・・
とはいえ、特に印象に残ることのない映画のひとつに加えられるかもしれない、99%の人が面白いといっても、残りの1%の人に賛成票を投じることになるかもしれない。そんな映画ですけど、見所といえばやはりカメルレンゴ(ユアン・マクレガー)ですょ、役柄はとても不満の残るもので、大どんでん返しという宣伝文句も的外れだとは思うけど、彼を主人公にして、最後に焼身自殺までする彼の背景やら執念やら、世界統一政府による世界征服の陰謀やら、彼自身の怒りと野望やらを前半から散りばめられているならば天使とお友達になれるかもなどと思いを巡らして・・・ユアン・マクレガーはやっぱりいいです。

天使と悪魔