茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~ -7ページ目

映画「チェンジリング」

原題:Changeling
昔のことゆえ不条理な警察権力も行方不明も、驚くほど珍しいことではないかも知れないけど、児童20人が惨殺、我が子が替え玉だったという衝撃の事件~

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天使が住んでいたというロサンゼルスは1928年のこと、電話会社で主任を勤めるシングルマザーのクリスティン・コリンズ(アンジェリーナ・ジョリー)が休日に一日家を空けた間に9歳の息子ウォルター(ガトリン・グリフィス)が姿を消す、訳も分からず悲嘆にくれる母親の元へ5ヵ月後に届いた息子生還知らせ、迎えにいってみれば別人のアーサー・ハッチンズ(デヴォン・コンティ)、一目で別の少年と分かるのに、この少年は自分がウォルターだと言い張りママと呼び抱きついてくる。なんとも怖ろしい気が狂いそうになる。だけども恐怖の物語はこれからが本番、本当の息子ではないと訴えるも警察は頑として聞き入れず間違いを認めようとしない。でも、こんな時代にも正義は存在する。精神病院の入院患者の女性キャロル(エイミー・ライアン)に助けられ、長老教会牧師グスタヴ(ジョン・マルコヴィッチ)の援助、そして担当刑事レスター(マイケル・ケリー)の機転を利かせた捜査が腐敗した世の中の真実を暴いていく・・・
残酷な見せ場は、全裸の母親にホースで放水を浴びせ、少年に斧を何度も振り下ろし血が飛び散るシーン・・・物語は母親の息子に対する愛情と執念から警察の横暴にも挑み、へこたれず正義を貫くという賞賛に値するものだけど、実のところ涙の滲む思いがしたのは、偽の息子と実の母親が再会を果たした時ぐらいで、意外に淡々と進む構成に拍子抜けの思いがよぎり、信じながらもクリスティンとウォルターが生涯再会を果たせなかった事実のほうに、その思いが重く残ってしまった。

チェンジリング

【追伸】祝!2月22日、猫の日(にゃんにゃんにゃん)

映画「迷子の警察音楽隊」

原題:Bikur Ha-Tizmoret/The Band's Visit
いかにもコメディを思わせるタイトルだけど、これがなかなか人間味溢れるハートウォーミングな物語、さすがに各国で34もの受賞があっただけのことはある~

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エジプトはアレキサンドリアの警察音楽隊、イスラエルのアラブ文化センターから招かれて、はるばる国境を越えてやってきたけど、バス路線図の前で立ち尽くしてしまう、迎えはなくとも、自力で目的地まで行くぞと、伝統を重んじる頑固な隊長のトゥフィーク(サッソン・ガーベイ)は、ちょっと軟派なカーレド(サーレフ・バクリ)に案内所で聞いてこさせてバスになんとか乗るけど、着いたところは目的地と一字違いの辺鄙な田舎町、気まずく戸惑う8人だけど、実はそこからほろ苦くも暖かで濃密な異国の夜が始まるのだった・・・
決して大袈裟に笑ったり泣いたりじゃなくて、どちらかといえばシュール、ユダヤとアラブの異民族間で自国の言葉と英語を使い分けながら、静かに微笑み、心を通い合わせる。とても微笑ましいシーン・・・ローラースケート場でのWデート、地元の童貞男に女性との付き合い方を伝授するシーン、それがとっても可笑しいし素晴らしい・・・それから、トゥフィークと食堂の女主人ディナ(ロニ・エルカベッツ)がお互いの人生を語り合うところも悲哀が滲み出ていて感動的、最後に彼女と一夜を共にするのはカーレドだけど、他のメンバーもそれぞれに個性的で観ていて楽しい、これはいい映画です。
(wowow)  The Band's Visit

映画「旭山動物園物語 ~ペンギンが空をとぶ~」

ペンギン館の完成が2000年9月、月間入園者数で初めて上野動物園を抜いて日本一が2004年夏のこと、なかなか旭山までは行けないけど夢は叶う物語~

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北海道旭川市旭山動物園、日本最北の動物園として開園したのは1967年のこと、以来数々の動物達の繁殖に成功しながらも、その道のりは幾多の苦難に満ちたものだった。飼育員がゾウに襲われ(戯れられて)死亡、感染症のエキノコックス症でゴリラが死亡、入園者数は減り続け旭川市の負担も限界を向かえ遂に閉園の危機に陥るも"夢はいつか必ず叶う"と信じ、かつてみんなで絵に残した行動展示を遂には実現させ、夏季シーズンには上野動物園をも凌ぐ入園者を誇るようになり現在の繁栄を築いた。
物語の中心は園長の滝沢(西田敏行)、そして飼育員達、中村靖日前田愛堀内啓子長門裕之岸部一徳柄本明六平直政塩見三省、部長に笹野高史、旭川市長役には平泉成から萬田久子と、多彩なキャストをそろえて喜怒哀楽の味付けを施した人間ドラマもみせてくれる。子供向け、家族向けと説明されているけど、動物好きな人も動物嫌いな人も、人間好きな人も人間嫌いな人も、子供好きな人も子供嫌いな人も、老若男女すべての人が楽しめ泣けるよね、可愛いペンギンやレッサーパンダやアザラシたちをもっとジックリみせて欲しい気はしたけど、感動的な素晴らしい映画です。

旭山動物園物語 ~ペンギンが空をとぶ~

映画「チェ 39歳 別れの手紙」

原題:Guerilla (aka Che Part 2)
キューバ革命、1959年成し遂げられたその成功は、彼にとって旅の途中の通過点に過ぎなかった~彼の心の奥底に何が渦巻いていていたのか落日の物語~

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チェ・ゲバラ(ベニチオ・デル・トロ)は、カストロに宛てた別れの手紙を残し、姿を消したのが1965年3月のこと、コンゴ遠征の後、1966年11月に新たな戦場を求め、中年男ラモンに変装し、妻と5人の子供達との最後の食卓を囲み、独裁政権下のボリビアに潜入、諜報要員の女性戦士タニア(フランカ・ポテンテ)とも合流、"今、世界の他の国々が、僕のささやかな助力を求めている。君はキューバの責任者だからできないが、僕にはできる"、そして、341日間に渡る戦いが始まる。
ボリビアでの戦いはいかにも人生の終焉に向かって崖を転げ落ちるかのように辛く悲しい、カストロとの友情は健在で鉱山労働者の支持もあったが、ボリビア共産党は武装闘争を拒否して支援が断たれ、農民の連帯は得られず逆に密告される始末、ゲリラ部隊の統制も乱れ、山から山へと迷走を続け、遂には追い詰められる。「チェ 28歳の革命」では、輝かしい革命の成功体験が待っているから退屈することもなかったけど、今回は申し訳ないけど途中で何度も睡魔に襲われてしまった。それでも物語の終盤に向かっては徐々に緊迫感が増してきて、政府軍に包囲され死が迫るその緊張感が、チェ・ゲバラという大きな星が落ちる喪失感が、空しく終わるその戦いが、物語のクライマックスであるとともにとても切なく感じる。
キューバで閣僚を歴任した彼も、アメリカによる経済封鎖に加えて、ソビエトを帝国主義的と非難したことから圧力を受けて、自ら政界を退いた、ボリビアにおいてもその彼の信念は決して曲げることなく貫き、華々しくも密やかに銃弾を受け絶命、彼は死せるとも彼の思想は死せず今も生きている。やはり偉大なる人物です。

チェ 39歳 別れの手紙   映画「チェ 28歳の革命」

映画「ヒトラーの贋札」

原題:Die Falscher
原作は「THE DEVIL`S WORKSHOP(ヒトラーの贋札 悪魔の工房)」、悪魔のワークショップというのが、なんだか的を得ているようで、主人公も善人じゃない~

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実際にオーストリア・トプリッツ湖から大量のポンド紙幣が見つかったという。それが1959年のこと・・・第二次世界大戦中にそのワークショップで作られた贋札は1億3,200万ポンドというから凄まじい。それがナチス・ドイツの"ベルンハルト作戦"・・・ユダヤ人のサロモン・ソロヴィッチ(カール・マルコヴィクス)は闇で公文書偽造や紙幣贋造を生業としていたが、行きずりの女性と一夜を共にしているところをヘルツォーク(デーヴィト・シュトリーゾフ)に踏み込まれ逮捕、強制収容所送りとなるも、腕を買われ贋札工場チームに修整主任として加わることになる。一匹狼だった彼も、印刷技師のブルガー(アウグスト・ディール)や美校生のコーリャ(セバスチャン・アーツェンドウスキ)らとの仲間意識が芽生え、生と死、正義と保身の狭間で葛藤しながらも持ち前の技術を生かした目覚しい働きで贋札を完成させる。
ナチスによるホロコースト、まさしく死がすぐ隣にある。そんな周囲の状況の中で、ブルガーはナチスの陰謀に加担することが結果的に仲間や家族を苦しめることになると正義を貫き死をも厭わぬ姿勢をみせ、紙幣印刷を妨害する。後に彼がおそらく誇らしくこのワークショップの出来事を書き著すのだし立派なのだけど、観客としては葛藤しながらも物語の主人公ソロヴィッチのほうに感情移入するよね、彼の仕事を完成させようとする気概、仲間を思いいたわる優しさ、正義の味方から非難されようとも彼にこそ人間らしさをみる気がする。最後にまたモナコ・モンテカルロのギャンブルで思い切り良く大金を散財し、海辺にたたずむ彼の後姿がとても侘しい。
(wowow)  ヒトラーの贋札